放課後、クラスの生徒を半分残して学園祭準備にとりかかった。

中1生にとっては初めての学園祭だから、こちらが全てお膳立てしておく必要がある。
クラス全員に仕事を分配し、「君はこう動きなさい」とそれぞれに細かく指示を出すのだ。
しかし指示だけでは彼らは動けない。
それが「この原稿を模造紙に書きなさい」という単純作業であっても、中1にとっては大仕事なのだ。
細かい疑問や不安が浮かぶたびに、「せんせー!!」と彼らは私を呼ぶ。
例えそれが別の生徒との会話のさなかであったとしても。

「今こっちで説明中!後で行くからちょっと待ってなさい!!」

私はとりあえずそう叫び、中断されていた説明に戻るのだが、生徒達は『呼んでも来てくれないのなら自分から』とばかりに私の回りにわらわらと寄ってくる。
肩や背中を叩いたり腕を引っ張ったり、なんとか私の気を引こうとする。

「ねー先生!先生!!先生ってばー!!」

最後はもう絶叫に近い。
うるさいので振り向いてしまったほうが楽なのだが、それでも私は敢えて振り向かない。
「話の途中に割り込むのは失礼だ」ということをしつけるいい機会だからだ。
絡みつく腕を無視し、鬱陶しさを我慢しながら説明を続ける。

ようやく話を終え、「はいお待たせ」と振り向くと、生徒達は焦れた顔をほっと緩ませるのだ。


しかしあれだけ大騒ぎしときながら、よこしてくる質問は
「下書きってしたほうがいいの?」
「何色で書くの?」
「字が歪むのイヤだから定規使っていい?」
といった類のものばかり。
自分のクラスの生徒は特別に愛おしいものだし、要領も得ていないのだから仕方がないのは判っているけれど、こういう時は星一徹ばりに卓袱台をひっくり返したくなります。

ま、楽しいけどね。

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