昨夜から断続的にお腹が張っていて、それが今朝になっても治まらず、痛みも頻度も増してきたので、病院に行った。
腹部エコーの画面を見る先生の表情がいきなり曇る。
「赤ちゃんがかなり下りて来ちゃってるね。陣痛かも。やばいなあ。内診しよう」
そして、内診室のカーテン越しに、先生が小さく息を吐くのが聞こえた。
「朝倉さん、子宮口全開だよ。羊水の袋がすぐそこまで来てる。陣痛が来ちゃってるね。残念だけど助けられないよ。流産、というか死産になります」
ああ、ダメだったか、と冷静に現実を受けとめている自分が少し不思議だった。
それからは怒涛の展開だった。
個室に移され、陣痛促進剤を点滴されると、それまでとはレベルの違う痛みが押し寄せてきた。
「子宮は筋肉だから、できるだけ力を抜いて収縮を助けるようにして」と助産師さんにアドバイスされ、細く息を吐くようにして痛みを逃す。
始めのうちはそれでもなんとかなっていたが、痛みの波の合間の無痛の時間が縮まってゆくにつれ、痛いのに力を抜くなんて芸当が出来るかどあほう、なんていう心境になってくる。
そして、生暖かい水がどっと出てきた。
破水です、とナースコールすると、ものすごい勢いで助産師さんがすっとんできた。
処置室に移動するからベッドから下りて車椅子に座れ、と指示されるが、痛みと破水でうまく体を動かせない。
助産師さんに抱き起こされ、なんとか立ち上がった瞬間、股の間を何かが下りてきて、咄嗟に助産師にしがみつきながら「何か出た」と叫んだ。
「いいから早く」と半ば無理矢理車椅子に座らされ、処置室に運ばれる。
そして、ベッドに横になろうと立ち上がった瞬間、再び股の間をずるりと下りてくる感覚がして、すうっと痛みが遠退いていった。
「出ちゃったみたいです。楽になりました」
と報告して、赤を潰さないよう気を付けながらベッドに横になった。
駆け付けた先生に、お腹の中を綺麗にしてもらった。
臨月のと違って若い胎盤は子宮にへばりつく力が強く、処置が大変なことが多いが、私の場合は出血も殆どなく綺麗な状態にできたそうだ。
「赤ちゃんに会う?」と聞かれ、頷くと、銀色のトレイを見せてくれた。
綺麗な顔をした女の子だった。
小さな手足の指先に、小さな小さな爪があった。
小さな口の中から、小さな舌が覗いていた。
ここ数日、胎動らしきものを味わわせてくれたのは、この子の最後の親孝行だったのかもしれない。
ほんの数ヶ月だったけど、今まで知らなかった幸せな気持ちをたくさん貰えたよ。
ありがとね、娘。
この頃、会社を早退したダンナが病院に到着したらしい。
私の処置が終わった後、先生がダンナにも話をして、娘とご対面させてくれたようだ。
それから処置室で休んでいる私のところにダンナが来て、手続きで何やかやとやってくる人達を捌いてくれた。
助産師さんが用意してくれた小さな白い棺に娘を入れて、最後にもう一度、娘の顔を見て、頭を撫でてから、葬儀屋さんにお願いした。
日曜にお骨になって帰ってくるそうだ。
助産師さんから、桐の箱に入った臍の緒と、娘のことを書き込んだ母子手帳を受けとった。
分娩日時、平成21年1月14日、15時50分。
妊娠期間、20週1日。
身長23.0センチ。
体重307グラム。
頭囲17.5センチ。
胸囲14.0センチ。
これらはダンナと私と娘、みんなで頑張った証だ。
正直言って今は涙が止まらないけれど、信頼できる先生に力を尽くしてもらって感謝しているし、私達も精一杯やった自信があるから、後ろ向きの気持ちは全く無い。
だから、私達は結構大丈夫です。
腹部エコーの画面を見る先生の表情がいきなり曇る。
「赤ちゃんがかなり下りて来ちゃってるね。陣痛かも。やばいなあ。内診しよう」
そして、内診室のカーテン越しに、先生が小さく息を吐くのが聞こえた。
「朝倉さん、子宮口全開だよ。羊水の袋がすぐそこまで来てる。陣痛が来ちゃってるね。残念だけど助けられないよ。流産、というか死産になります」
ああ、ダメだったか、と冷静に現実を受けとめている自分が少し不思議だった。
それからは怒涛の展開だった。
個室に移され、陣痛促進剤を点滴されると、それまでとはレベルの違う痛みが押し寄せてきた。
「子宮は筋肉だから、できるだけ力を抜いて収縮を助けるようにして」と助産師さんにアドバイスされ、細く息を吐くようにして痛みを逃す。
始めのうちはそれでもなんとかなっていたが、痛みの波の合間の無痛の時間が縮まってゆくにつれ、痛いのに力を抜くなんて芸当が出来るかどあほう、なんていう心境になってくる。
そして、生暖かい水がどっと出てきた。
破水です、とナースコールすると、ものすごい勢いで助産師さんがすっとんできた。
処置室に移動するからベッドから下りて車椅子に座れ、と指示されるが、痛みと破水でうまく体を動かせない。
助産師さんに抱き起こされ、なんとか立ち上がった瞬間、股の間を何かが下りてきて、咄嗟に助産師にしがみつきながら「何か出た」と叫んだ。
「いいから早く」と半ば無理矢理車椅子に座らされ、処置室に運ばれる。
そして、ベッドに横になろうと立ち上がった瞬間、再び股の間をずるりと下りてくる感覚がして、すうっと痛みが遠退いていった。
「出ちゃったみたいです。楽になりました」
と報告して、赤を潰さないよう気を付けながらベッドに横になった。
駆け付けた先生に、お腹の中を綺麗にしてもらった。
臨月のと違って若い胎盤は子宮にへばりつく力が強く、処置が大変なことが多いが、私の場合は出血も殆どなく綺麗な状態にできたそうだ。
「赤ちゃんに会う?」と聞かれ、頷くと、銀色のトレイを見せてくれた。
綺麗な顔をした女の子だった。
小さな手足の指先に、小さな小さな爪があった。
小さな口の中から、小さな舌が覗いていた。
ここ数日、胎動らしきものを味わわせてくれたのは、この子の最後の親孝行だったのかもしれない。
ほんの数ヶ月だったけど、今まで知らなかった幸せな気持ちをたくさん貰えたよ。
ありがとね、娘。
この頃、会社を早退したダンナが病院に到着したらしい。
私の処置が終わった後、先生がダンナにも話をして、娘とご対面させてくれたようだ。
それから処置室で休んでいる私のところにダンナが来て、手続きで何やかやとやってくる人達を捌いてくれた。
助産師さんが用意してくれた小さな白い棺に娘を入れて、最後にもう一度、娘の顔を見て、頭を撫でてから、葬儀屋さんにお願いした。
日曜にお骨になって帰ってくるそうだ。
助産師さんから、桐の箱に入った臍の緒と、娘のことを書き込んだ母子手帳を受けとった。
分娩日時、平成21年1月14日、15時50分。
妊娠期間、20週1日。
身長23.0センチ。
体重307グラム。
頭囲17.5センチ。
胸囲14.0センチ。
これらはダンナと私と娘、みんなで頑張った証だ。
正直言って今は涙が止まらないけれど、信頼できる先生に力を尽くしてもらって感謝しているし、私達も精一杯やった自信があるから、後ろ向きの気持ちは全く無い。
だから、私達は結構大丈夫です。
コメント
前回の検診のところまで読んで、あともう一息で、例え早産でも助けられるところまであと一歩と思っていたのに…
もう今日から五日前の話なんだね。
少しだけでも落ち着いた?
すごい、すごいわかるよ。
こんなに気をつけて頑張ってきたんだもの…
またあとでメールするね…
すごく残念で、かわいそうです。
今度はきっときっとうまくいきますよ。